映画櫻の園の評判

映画、櫻の園は、実は1990年と2008年の2度にわたり映画が製作、公開されています。どちらも監督は中原俊さんなのですが、それぞれストーリー運びなどに違いがあります。そのため、同監督作品でありながら、評判が分かれているのが特徴です。

1990年に公開された作品の評判について

1990年度に公開された方については、まずは原作の設定などはそのまま採用されており、「桜の園」を上演する直前、その舞台裏で繰り広げられる騒動に翻弄される演劇部に所属する少女たちの姿が描かれています。

登場人物である20人以上の演劇部員たちは、全てオーディションで選出されました。そのため、日常の中で繰り広げられる、ごく普通の少女たちのドラマと言う原作の魅力が、より一層、引き立つ形で表現されていたとも言えます。どらかと言えば地味目な、しかも心理描写を主とする内容を、しかし、丁寧に、派手さを抑え誠実に描ききった作品に仕上がっています。

フレッシュなキャスト陣の、観る者の心に訴えかけるような演技、作品としての丁寧な作りが功を奏し、クオリティの高い作品として数々の映画書を受賞するなど、各方面から高い評価を得ました。興行的にも成功をおさめ、中原俊監督の代表作として知られている作品とも言えます。

2008年に公開された作品の評判について

櫻の園が、再び映画化される。しかも、監督は前作同様、中原俊監督だと言うことで、公開前には話題になった2008年度版の櫻の園は、しかし公開されてからの反応は、あまり良いものではありませんでした。

キャスト陣は、現在でも第一線で活躍している女優さんなどが名を連ねているのですが、原作の設定や魅力を全く活かしていない作りとなっていることが、低評価の要因とも言われています。伝統的に上演されてきた演目としてのチェーホフの「桜の園」が、今作においては、とある事情により上演禁止になっていると言う設定に変更されています。その上演禁止を撤回させるために、転校生と彼女の友人たちが奔走すると言うのが、2008年度版のあらすじです。

何故、「桜の園」の上演は禁止されているのか。その謎を軸に物語を展開させたのは良かったのですが、そこに本来の櫻の園で描かれている、静謐さを漂わせながらも、触れる者の胸を切なくさせるような少女たちの心理的描写はほとんどありません。いわば櫻の園でありながら、まったく別の作品のように仕上がってしまっていると言うのが、今作なのです。そのため興行的にも大惨敗、漫画や1990年度版の櫻の園を知る人からの反応も思わしくなく、結果として新規のファンを取り込むこともできなかったと言う事態につながってしまったと言う具合です。

このように評判や評価が全く異なる映画、櫻の園ですが、だからこそ、2作品を見比べ、更に原作漫画を読んでみることで、自分なりの感想を持つことができると言う楽しみがあります。